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私的風景の電脳記録
by innerscape
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演じることとアイデンティティについての覚書

昔からなぜか人の心の中を分析してしまう癖があり、精神科医になりたいと思っていた時期があった。今でもそれはあまり変わらずに、むしろ他者の心の観察と分析の精度が上がってきているように思える。己に対しても分析の眼を向けるという意味では役者として「何かを演じる」というのは良い訓練になる。

ここでポイントになるのは「誰かを演じる」のではなく「何かを演じる」ということ。想定したキャラクターを演じるという事ではリアリティは生まれないように思える。借りてきた振る舞いを演じるのではなく、その根元にある感情をいつでも取り出せるようにしておくのが役者の仕事なのだと思う。

人は誰でも「何かを演じている」というのが僕の基本的なスタンスだ。それはカメラの前や舞台の上だけではなく、日常の中に演技は溢れている。状況が演技を作る事もあれば、経験の中で演技の方向性が培われることもある。演じているうちにそれがアイデンティティになってしまうこともある。

知らずのうちにその演技している自分が自分らしいと感じてしまい、そこから外れた自分に違和感を覚えるようになってしまうのは、演じ方にアイデンティティを覚えるからなのだろう。だから演じ方が揺らいだ瞬間に変われるチャンスがやって来る。しかしその時は成長と同時に危うい瞬間でもある。

これまでの演じ方に指摘と否定を加え、アイデンティティの揺らぎを起こすことで取り込もうとするのがカルトの手口だ。コミュニティが共有する宗教や倫理の基盤がしっかりしている時にはそう簡単に揺らぎはこなかったのかも知れないが、基盤が崩れている今は危ない状態でもあると感じる。

もっとも見せかけの安心感をつくろうことで、何も揺らぎなどないような錯覚の中に漂わせるという罠も巧妙に仕掛けられていることに気づかねばならない。ある年齢まで来るとアイデンティティを揺らがされたくはないものだからそうした罠に疑いの眼を向けたくなくなる気持ちがあるのだろうが。

アイデンティティと社会を巡る問題はメディアの発達とともにますます複雑になっているし、演劇や演技のあり方の変化を通じてそれが透けて見えることもある。そのあたりを少し問いたいとは考えているのだが。さてうまくいくのだろうか。
by innerscape | 2012-02-19 23:41 | 覚書

私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?

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