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私的風景の電脳記録
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「旅人と村祭り」

ある村にふらりと旅人がやってきた。
村から村へあてどもなく旅をする旅人は特にその村をめざしてやってきたわけではない。
どこか目的地があるわけでもなくたまたま立ち寄った村なのだが、旅の生活が長いのでひどく疲れている。
長い旅を終えて落ち着いて暮らせる場所を探しているようにも見えるがそれがどの村なのか旅人には分からない。
とにかく旅人はその村にやってきた。
村の人々にとって旅人は警戒すべき存在だ。
顔の見知った村の連中とは違って何を考えているのか分からない。
何かモノが盗まれやしないか、誰か傷つけられやしないか。
旅人が居る間、毎日村人は怯えながら暮らさねばならない。
出来れば早く出て行って欲しいがいつまでこの旅人は居るのだろう。
村人たちはそう考えていた。
旅人は村人と仲良くしたいと考えてはいるが、なかなか警戒心を解かない村人たちの反応にはもう慣れている。
どの村でもそうさ。
僕はよそ者で村人たちにとっては迷惑な存在なのだから。
旅人はここにも居場所はないということをいつも知っていた。
しかしただ一人、村長だけはそう考えなかった。
旅人は貴重な存在だ。
他の村の情報も教えてくれるし、村人では思いつかないような発想を持っている。
村人たちのように日々の仕事に追われる事もないから色々と役に立つだろう。
せっかくやってきた客なのだからもてなそうじゃないか。
村長はそうやって旅人に村はずれの丘にある風車小屋に寝泊まりする場所を与えた。

ある夜、村長は考えていた。
もうすぐ村祭りの時期がやってくる。
村人達はとても忙しいが村祭りをしないわけにはいかない。
旅人はどうせあてもなくふらふらとしているのだから手伝わせればいいじゃないか。
村人の中でも力を持った者たちに村長は耳打ちをした。
次の日から村人たちの態度は変わった。
村祭りが終わるまではあの旅人に居てもらわないと困るのだ。
旅人に冷たくするのはよそう。
村人たちは旅人に近づき、村のことを色々と教え始める。
旅人はこれまで冷たかった村人たちがだんだん仲良くしてくれるのがとても嬉しかった。
村祭りが近い事もしっていたし、村長から村祭りの手伝いをお願いされた旅人は祭りの終わりまではこの村に留まることを決めた。
旅人は忙しい村人たちに代わって一生懸命に村祭りの準備をする。
社を掃除し、飾り付け、他の村で見て来た新しい村祭りの作り方も取り入れた。
そうやって毎年の村祭りとは違ってとても奇麗な村祭りの舞台が出来てきた。
村祭りが始まる時期になると村人たちも準備に加わった。
一緒に準備をしていく中で村人と旅人とはだんだん仲良くなり、心の距離もぐっと近づいた。
旅人はそれが嬉しくて、準備にもっと精を出し始めた。
最初はこの村祭りを手伝わすために旅人を利用しようと考えていた村人達も旅人の懸命な働きぶりにだんだんと心が変わって来た。
この旅人のおかげで今年はいつもと違った村祭りがこの村でも出来る。
なんてありがたいんだ。
村人がそう考えるようになったことに気づいた旅人はもっと村祭りの準備にはげみはじめた。
村長は村人たちが旅人と仲良くするようになっていく様子を微笑みながらみていた。
そして村祭りが始まった。
村人達はここぞとばかりにそれぞれの家から奇麗な服を持ち寄って奇麗に飾り付けられた舞台へやってきた。
飲めや歌えやの大騒ぎが繰り広げられて、いつもの村祭りよりも盛大に盛り上がった。
村人達も村長も大いに楽しみ大満足の宴だった。
しかし村人たちはあまりに楽しみすぎてしまいすっかりと旅人のことを忘れていた。
村祭りの最中に誰一人、旅人のことを思い出すことはなかったのだ。

その頃、旅人は寝泊まりしていた村はずれの丘にある風車小屋から、村祭りの火を見ながら考えていた。
僕は村祭りの準備を手伝うように村長からお願いされたけど、村祭りに参加してもいいとは言われていなかった。
それに誰も僕のことを呼びにこないじゃないか。
やっぱり僕はこの村にも居場所は無かったんだ。
旅人は独りそうつぶやくと荷物をまとめた。

村人たちは朝になってようやく旅人の姿が居ないことに気づいた。
どうしてあの旅人は村祭りに加わらなかったのだろう。
村人たちはみんな色々と考えた。
準備を手伝ったのだから祭りにくるのは当たり前だろう。
そうつぶやく者も居た。
準備までしたのに祭りにこないなんてやっぱりあいつは変わり者なんだ。
そうつぶやく者も居た。
準備までしてくれて呼びにいかなかった俺たちが悪かったんじゃないか?
そうつぶやく者も居た。
とにかく風車小屋まで見に行こう。
村長のその言葉に村人は全員で風車小屋まで出かけていった。

風車小屋についた村人たちはそこに旅人の姿も荷物も見つけることは出来なかった。
旅人は朝まで誰も迎えにこないので明け方に次の村へと出かけてしまっていたのだ。
村人たちはまた口々につぶやいた。
しまった、ああなんて悪い事をしたんだ。
そうつぶやく者も居た。
いや、こなかったあいつが悪いんだ。呼ばれなくても来たけりゃ来ればいいはずさ。
そうつぶやく者も居た。
どうせ旅人は旅人だ。俺たちが呼ぼうと呼ぶまいと勝手にしたはずさ。
そうつぶやく者も居た。
いずれにしても旅人は行ってしまったのだから、村へ戻って後片付けをして、また次の収穫の準備をしようじゃないか。
村長のその言葉に村人は全員でまた村へ戻っていった。
誰も旅人の後を追いかける事はなかった。

(旅人と村祭り 作:ハナムラチカヒロ)
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by innerscape | 2012-06-22 22:27 | 私的詩

私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?

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