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私的風景の電脳記録
by innerscape
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与えられた儚い命

船場建築祭が終了した。
4つの近代建築とシンポジウム会場の合計5つの場所で行われたが、話を聞いていると結果はひとまず成功と言えるのではないかと思う。
僕が今回インスタレーションさせていただいた会場の伏見ビルでも1日だけで240人の来場者を超すような大盛況だった。
結局たった1日限りで作品は撤去したが、多くの方に何かを感じていただけたということで充実感を感じている。グラフの服部氏がされた詩のインスタレーションも僕のものと合わさり場のイメージアビリティを高めていたと思う。
今回は、登録文化財である近代建築でインスタレーションさせていただいた船場アートカフェに感謝するとともに、制作を支えてくれた多くのボランティアスタッフに感謝したい。そして何よりも46年間もこの場所を守り続けてきたオーナーの上村さんの存在無しでは作品そのものが成立することは無かったと思う。
本当に感謝するあまりである。

作品の記録については写真家の八久保さんにお願いしてずっと撮ってあるので追って公開しようと思うが、ひとまずは朝日新聞の取材で来られたフリーカメラマンの山崎さんから写真をいただいたのでアップしたいと思う。
以下は会場で配られたコンセプトペーパー。

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インスタレーションと呼ばれる行為の意味を今でもずっと考えている。
何かをその場所に“挿入する(インストール)”ということを意味する言葉だが、単に作品を設置するという意味ではなく挿入されたものを通してその空間で発見される“何か”が大事なのだと思う・・・。
もともとホテルとして建てられたこのビルを現在のオーナーの上村さんが手に入れてから半世紀近く時を経ている。その間ずっと竣工当時の空間性を出来るだけ維持しようとして色々と手を尽くされたそうで、今でもこの伏見ビルが柔らかい空気感を保っているのは上村さんのそうした努力の積み重ねの他ならないと思う。
この場所に身を置いてそのことを僕がもっともリアルに感じたのは、白く滑らかな壁面でも当時から維持されている特徴的な外壁でもなく、実は壁を縫うようにして這う設備配管だった。
通常はこうしたインフラは建物の表面や内部を飾るにはふさわしくないモノとして排除されがちである。あるいは視界には入っていても無いものとして眺められている。でも特にインフラが整えられる以前の近代建築には後から付け足されて行くパイプやコードの這いずり回る様相は僕に生きる事へのリアリティを感じさせる。
もちろん雨風を防ぐシェルターとしての建物が文化的な美しさを持つ事が重要なのは当然であるのだが、それ以上に今の僕たちの現代生活は都市と直結した配管を通じてやってくるガスや水道、電気などのエネルギーや情報インフラに依存して営まれている。そのことはこの建物を美しく維持するという理由以上に生きていく上で切実な要求がある。だからこそ苦労しながらも上村さんが受け入れてきた配管には嘘や捏造がなくリアルに映るのだ。
それは人に例えると皮膚や顔の表面よりもその下に薄く見えている血管の方に生命を支えているリアリティを感じるのと似ているかも知れない。あるいはこの伏見ビルの隣に建つ青山ビルの壁面を伝うナツヅタのように、建物の意匠の一部になっていることとは無関係に光を求めて成長していく自然のリアリティと同じなのかもしれない。
そんな想いで、普段は無視され僕たちの意識から外れがちな存在であるこうしたパイプやコードたちに僕は今日一日だけこっそりと命を与えてみた。
さて、その命を通してあなたはここで何を発見するのだろうか・・・。

与えられた儚い命_a0091712_1275361.jpg
(c)山崎虎之介
by innerscape | 2006-10-08 01:22 | アート

私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?

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