flw moon innerscape


私的風景の電脳記録
by innerscape
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

アートをめぐる問題

a0091712_21354248.jpg

毎週木曜日のCSCDはメンバー全員が集まる日である。
今までは各メンバーがどういうバックグラウンドを持っているのかをプレゼンテーションしてきたのだが、オープニングイベントが近づいてきたことや、各チームのプロジェクトを進めないといけないということもあり、一旦自己紹介は中座して、今日はミーティングをすることになった。

CSCDには三つの部門がある。
医療現場におけるコミュニケーションの問題に取り組む「臨床コミュニケーションデザイン」。
災害現場や科学技術の安全性についての問題に取り組む「安全コミュニケーションデザイン」。
そして僕が所属している「アート&フィールドコミュニケーションデザイン」である。
ぞれぞれの部門において、どんな問題意識のもと、どう取り組んでいくのかを見定めて進んでいかないといけないのだが、アートについては他の二つと比べて具体的な現場を持っていないため、問題意識の共有という最初の段階で速くも僕達の間でディスコミュニケーションが起こっていた。
僕自身はランドスケープという現場を持っているので、そこにおける具体的なディスコミュニケーションについては理解しているのだが、それをアートという一般化した形で語ることは、いささか違うのではないかと感じていた。

アート&フィールドには様々な人がいる。
美学・造形学/アートマネージメント/社会学/メディアデザイン/ランドスケープ/グラフィックデザインなど異なる領域の人々から構成されている僕達のチームでは「アート」という言葉の解釈と「アートの役割」について、各メンバーそれぞれの意見が違うのは無理の無いことだろう。その違いからコミュニケーションは出発するのである。
個人的に感じたのは、特にアートとメディアの関係性についての解釈が大きく異なっていることだ。これは各人がイメージしているアートが異なっていることとも関係している。
美学の領域では現代アートは解釈や定義が定まっていないため、研究の対象とされていないらしいのだが、メディアアートはほとんどが現代アートの領域になる。
アートとメディアは異なるものであるという意見、アートはメディアだという意見などをめぐる議論もされた。
その他には、
「アートは自己表現なのか、パブリックなものなのか」
「アートは人を幸せにするものなのか、違和感や痛みを与えるものなのか」
「アートは日常に偏在しているのか、非日常であるのか」
「アートは美術館の中で特権化しているべきなのか」
「アートは問題提起するものでデザインは問題解決するものなのか」
「アートは普遍的なものなのか、特別なものなのか」

などなど焦点がなかなか定まらないまま時間が過ぎていく。

以前建築でも同じような議論がされたことがある。「建築とは何か」という定義の問題である。
その議論が行き詰ったときに、建築家の原広司氏は「建築とは何か」ではなく、「建築に何が可能か」を考えるべきだと述べたという。
色んな解釈がされるようになり本質が見えなくなってしまった時には、そのものが持っている可能性について述べることで逆に本質をあぶりだそうとする姿勢が重要なのだろうと感じる。
そういう意味で、「アートとは何か」ということを定義することから議論をスタートさせるとどんどん深みにはまっていくので、「アートに何が可能か」を考えることでぼんやりと全体像を描いていく方向へ転換した方がよさそうだと思う。
このあいだお会いした建築家の曽我部昌史氏は「建築に何が可能か」という言葉を受けて「建築家に何が可能か」という主体に置き換えた言葉を述べていた。

デジタル数字を使ったアーティストの宮島達夫氏は「Art in You」という言葉を使っている。
少し長くなるが、安東幸一氏との対談の中での彼の言葉を引用してみたい。

『大体、アートって見る人がいなければ成立しないわけですから。この点はけっこう誤解している人たちがたくさんいるんだけど、僕はそう考えている。70年ぐらい前に、アインシュタインとタゴールが対談していて、美とは何かという話題で、アインシュタインは「美とは個々の人間とは関係をもたず、絶対的に存在している」って言うんです。一方、タゴールは、「美は、それを見る人間を通してはじめて意識化され、実現化される。美だけが単独に存在しているわけではない」という考え方だった。「見る人がいなければ、アフロディテのヴィーナスだって、ただの石ころじゃないでしょうか」と。で、僕はどちらかというとタゴールの方の立場。見る人間がいて、はじめてリアルな作品になる、アートとして成り立つ。だから、ある意味で、観客は創造する側でもあるわけです。こういう考え方は、ここ3年ぐらい「Art inYou」という言葉で表現しています。』

なるほど。僕にはとても分かりやすい言葉である。
この考え方は観察者の存在抜きに考えることができない量子力学のスタンスや、経験されたことが世界を構築していくという哲学/現象学のスタンスとほとんど同じである。
このように対象物と観察者の関係性の中でアートを語っていくことで少し整理されるように思う。
さらに宮島氏はこう続ける。

『「Art in You」、つまりアートというのはあなたの中にあるということなんです。すべての人たちがもともとアート的なるものをもっているから、アートを感じることができる。本当は、見る人は、自分の中にあるアート的なるものを、作者や作品を借りて見ている。だから「アートは自分を発見すること」になるのだと思う。』

ここでアートはほとんど自分を発見するためのメディアというように受け取れる。アートを媒介にして自分と作者、あるいは自分と事物の関係性や差異を発見するのである。

『本来アートとは、そういうものじゃないかなと思います。セザンヌの絵を見て感動して、りんごに愛着を感じだしたりとか、何かひきずりますよね。その変容は、生活自体を豊かにする。今までアートの多くは、美術館というホワイトキューブの中だけで完結していた世界だったけれども、そうではなくて、人間と生活空間まで考えた作品づくりというのは可能なんじゃないかと思っています。』

アートに触れることで、良くも悪くも何らかの影響を受ける。
豊かになるかどうかは分からないが、今まで感じていた世界の見え方が少し変わる。それは個人的な体験なのかもしれないけれど、ひょっとすると誰もが考えていなかった見方を提示しているかもしれない。そうなると社会全体で共有しているような価値観が感覚的にゆさぶられる。そんな力を持っているのかもしれない。
彼は自然や風景に対してはこのように述べている。

『うーん、たとえば自然は、そのままでは膨大に広がっているカオスなんですね。宇宙空間にポンと放り出されて右も左もない、自分の位置すら分からないという。それに人間がフレームをつけることで、「自然」というふうに見えてくる。「自然」はもともとあったのではなく、人の努力で発見されて、美として意識できるんです。それで、その時々に、カオスをフレームづける人間がいたんですよ。』

この考え方は、自然が人に見られた瞬間に人工的なものになるという考え方や、あるいは「パンセ」に書いてあるように自然はその地域の文化が共有している習慣によって規定されるという話にもつながる。このあたりは大阪大学の副理事である哲学者鷲田清一氏が「モードの迷宮」でも引用されているので、少し話したいところだが。

宮島氏はアーティストの役割についてはこう述べている。

『アーティストは、常にその時代時代における、日本再発見のフレームづくりを目指さないといけないんです。なぜなら、自然の状況は刻々と変わっていく。今の日本に雪舟的な風景や浮世絵的な世界なんてあり得ないわけです。だったら今、自分たちが暮らしている日本の風景、あるいは風土をもう一回フレームづけて再発見しなければならない。そのときの自然というのは、工業製品やプラスティック、インターネットも含まれた、日本の現実なんです。そのリアルなものを、どうフレームづけて出していくかということを考えていますね。』

ほとんど僕が考えるランドスケープアーキテクトの役割の一つと同じである。フレームづけの話は、僕達が場所に「云われ」を与えるだけで場所の意味合いや見え方を変えれないかと試みている「イワレ捏造開発機構」という提案と同じスタンスである。
アーティストはさることながら、ランドスケープアーキテクトも場所の物理的環境を改変する技術を磨くと同時に、一方でこうした環境の見方やフレームをどう設定するかということに目を向けなければならない。

宮島氏の言葉に補足して述べるのならば、発見のフレームを論理や言葉でデザインしていくのは、おそらく臨床や科学技術コミュニケーションで目指されているミッションと共通している問題で、それに加えてアートが独自性を持っているとすれば、それは感覚的にゆさぶることなのだというように理解している。
[PR]
by innerscape | 2005-05-26 21:35 | アート

私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?

フォロー中のブログ

最新のトラックバック

cat play cen..
from cat play centres
farmers insu..
from farmers insura..
dirtrunnr.com
from dirtrunnr.com
canada goose..
from canada goose o..
http://www.a..
from http://www.air..
air max 1
from air max 1
nike air max..
from nike air max 95
air max 2013
from air max 2013
air jordan xx9
from air jordan xx9
mincir-intel..
from mincir-intelli..

ライフログ

検索

ファン

ブログジャンル

画像一覧