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私的風景の電脳記録
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土地の記憶と人の記憶

認知症と土地の記憶について、同僚でもあり、看護士で臨床哲学者である西川さんと対談をする事になった。
これを期に、自分が土地の記憶についてどう考えているのかもう一度整理してみようと思う。

都市計画や建築やランドスケープデザインは、公共空間を扱う職業である。同時にこの職能は土地を扱う、しかも他人の生活が行われる土地を扱い、さらにその他人は一人ではなく複数なのである。

それゆえ建築や都市計画は人々のライフスタイルの変化と密接に結びついて行われ、近代化の波の中で、人々が古いライフスタイルを捨てて新しいライフスタイルへ移行する中で用途や目的を満たす事に心を砕かなければならない時代があった。人口が増え、都市に人が集りたちまち住むための場所が必要になる。あるいは車交通が急激に発達し、道路整備をしなくてはならなくなる。そのためには土地に対しての個人的な記憶や思い入れのある場所などを考慮している暇など無かった。それに人々の記憶や匂いが塗り込められた土地は古くさいものとして捉えられ、近代的な生活様式の中でむしろ捨て去るべきものとして時代が求めたのだ。

しかしある程度近代的な生活が人々の中に行き渡った時、冷静に街を捉えてみると、実は自分たちやその親達、先祖達が生きて来た痕跡が根こそぎ消え去ってしまっていることに気がつく。
土地の痕跡や記憶を一度白紙の状態へリセットして、そこから新しいものを上書いてきた結果、そうした土地の匂いが脱臭されてしまったのだ。
そうすることで確かに生活は新しく便利にはなったかもしれない。しかしそれは生活が豊かになったことと必ずしも一致しているわけではないのだ。
そんな中で、都市計画や建築の領域でも、人々が生活する上で便利さだけではなく、街や土地に抱く意味というのが実は重要なのだということがだんだん理解され始めた。

人々が街に対してどのような意味を抱くのか、土地には人々のどのような記憶が塗り込められるのかということを意識しながら都市計画を進める事の重要性が唱えられ、ケビン・リンチという都市計画学者は認知地図やメンタルマップという研究を始めた。
街というのは大きすぎて、そして関わる主体が多すぎるので照準の合わせ方が難しい。人にとって街のどこに意味を見いだすのかという事は千差万別だし、その意味もきっとバラバラなはずである。
だからリンチはまずは街の中でどういうモノが人々の記憶に残るのかという事を把握する事から研究を進める事にした。

頭の中で自分が住んでいる場所の地図を書いてみる。すると自分にとって意味を持ち、印象的なものは地図に記され、自分にとってそれほど意味を持たないものは地図から抜け落ちていることが分かる。
では他の人が描くと一体どんな地図になるのか。
自分と同じ場所が記されているかもしれないし、自分が知らない場所が記されているかも知れない。
このような「記憶の地図(メンタルマップ)」を同じ街で生活する様々な人に書いてもらう。
そしてその「記憶の地図」を一枚に重ねてみると、きっとみんなの印象に残っているものが地図に色濃く残るに違いない。こうして作られるのが「パブリックイメージ」と呼ばれる地図である。
その地図には多くの人にとって印象に残っているものが描かれている。つまりそこに描かれているものには多くの人々が何らかの意味を見いだしているという事である。

しかし実はケビンリンチは研究を進めるにあたって人々が都市にどのような意味(ミーニング)を持つのかという部分については先送りにしている。
それはあまりに多くの人がそれぞれの生活の中で様々な意味を込めているため、都市計画者としてはその領域に入り込むには困難を伴うからである。
だから彼はまず、こうして印象に残るもの(アイデンティティ)が何で、それらが街の中でどういう位置関係(ストラクチャー)として把握されているかという事に限定して分析を進めた。
そして都市のアイデンティティとストラクチャーについての分析を進める中で、人々が都市環境を認知する上で重要な要素として都市のレジビリティ(分かりやすさ)を上げている。
簡単に構造(ストラクチャー)が把握出来る都市、つまり現在位置がすぐにわかり、目的地までの経路が即座に選択出来る都市はレジビリティが高い。反対にレジビリティの低い都市とは簡単に迷ってしまい、目的地にたどり着く事が難しく、場合によってはそこまでどのようにして来たのかが分からないような都市である。
もちろんこのレジビリティはその人がどれだけその街での体験や知識が豊富なのかという事と関係している。

人は街で行動する時には、自分の頭の中で構築された地図(メンタルマップ)を元にしている。メンタルマップは初めてやってきた土地ではまだ乏しく、色々とその街で経験をし、それが記憶として蓄積されていくことで徐々に構造を持ち始める。
しかし実際の環境が自分がイメージしているメンタルマップと大きく異なった場合には、人は行動を躊躇したり、パニックに陥ってしまう。

実はこれは時間的にも同じ事が言えるのかも知れない。
自分が育ち様々な記憶が塗り込められた街が、急速に改変されていき、その記憶の断片が消去されていく。
自分が頭の中で抱いている土地の記憶と、実際の土地の姿が大きく異なってしまった場合、人は同じようにパニックに陥るのだと思う。
人は記憶の中で自分の位置を空間的に位置づける事をすると同時に、自分が生きて来た痕跡を時間的にも位置づけようとする。

詳細は分からないが、実は認知症という症状は、僕たちのメンタルマップが破壊された時に普通にパニックに陥ってしまう事の状態の延長線上にあるのではないかと思う時がある。
記憶とは個人の頭の中にあるのでも、土地にあるのでもなくその両者の相互作用の中にあるのだと思う。土地と人との間の相互作用が生み出す風景、つまりシーンとして人は何かを記憶している。
過去に自分がそこで何かを行った記憶が塗り込められている土地に触れる時に、頭の中の記憶が引き出される事があるのかもしれない。
逆に言うと、その塗り込められているはずの記憶が跡形も無ければ、頭の中の記憶も引き出されず、パニックに陥る。実は認知症とはこういう構造なのではないだろうか。
これはその度合いの大小はあるにせよ、僕たちでも普通に体験する事である。何も特別な事ではない。人には自分が生きて来た証や記憶を証明してくれる風景が必要なのである。

だから土地をデザインする時にはそうして塗り込められた記憶の断片を手掛かりにする必要がある。それは何も記憶の全てでなくても良いのだと個人的には思う。そして記憶を石碑のような形で記号化して扱うことでもないのだと思う。

都市計画や建築でもここ15年ほど、こうした土地の記憶をどう次へ紡いでいくのかという事が議論されているが、まだまだ一般的ではないように思える。
それにその土地の記憶をどう扱うのかということに対してまだまだ議論が混乱している。
景観論/ランドスケープ論が難しいのは、誰の記憶にそれを合わせるのかという事の議論が整理されていないからなのだ。景観は政治や権力や全体主義にすぐに絡めとられてしまう。
土地の記憶を未来へ繋げるという名目で行われる日本橋の上の高速道路の地下化は、本当に人々の記憶を未来へつないでいくのだろうか。
実は一部の世代のノスタルジー的な記憶と、景観をネタにした新手の公共工事ではないのだろうか。
アスファルトやコンクリートジャングル、東京砂漠と嘆かれている都市の風景。
しかしその中で育った僕たちのような世代は既にそこに記憶を塗り込めてはいないだろうか。
工場や埋立地や高速道路の高架下などに、新たな意味を見いだしていないだろうか。
土地に埋め込まれた記憶は、全てを復元するような形で掘り出されるべきではないと個人的には思う。風景とは各時代で人々が土地に求めたものが積み重ねられて生まれて来るものだし、生み出された風景に対して人はまた記憶を塗り込める。だから土地をデザインするということは、連歌のようにあるべきだと思う。
前の読み手の句を受けて、次の読み手が句を作っていくように、土地に埋め込まれた記憶を上手に受けながら次の土地のイメージを上書いていくことが土地のデザインには大切な事なのだ。
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by innerscape | 2008-01-31 02:53 | ランドスケープデザイン

『琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。』

田辺弁慶映画祭で上映されました『琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。』がついに1月1日から、大阪のシネ・ヌーヴォXで劇場公開することになりました!
今までの沖縄映画の枠では捉えられないリアルな沖縄の映画がここにあります。
皆さん是非劇場へ足をお運び下さい!!
きっと、見終わった後に幸せな気分になれますよ。

「琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス」

※18日間の上映ですが、最後の週は夜2回のみとなっています。

シネ・ヌーヴォX
●1/1(火)~11(金)
12:20/14:20/16:20/18:20(※5日から20:20の回もあり)
●1/12(土)~18(金)
18:20/20:20(夜2回のみ)

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by innerscape | 2008-01-18 20:37 | インフォメーション

ご挨拶

昨年はたくさんの方々にお世話になりました。
仕事でも、プライベートでも、その区別は無い場所でも。
そしてこのブログに訪れていただいた方にも。
本年は皆さんとともに素敵な一年が過ごせるようにお祈りしております。

よろしくお願い致します。
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by innerscape | 2008-01-01 20:31 | 日常

私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?

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