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私的風景の電脳記録
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なぜヒーローは覆面をするのか?

映画「ウォッチメン」を観た。
この作品は旅に出ていた3月に香港や上海でやたらと宣伝を目にした作品だったので気にはなっていたのだが。

正直な感想を述べよう。
良くわからなかった。
というよりもその場で即判断できなかった作品だった。
ということは、僕の今までの事例に当てはめるとおそらく良い作品なのだろう。

この作品を解釈する時に原作の持っている性質と、それを映画にした時の性質との二つに整理して考えた方が良さそうだからだ。
まず原作からして非常に特殊な作品なのだろう。
いわゆるアメリカンヒーローが活躍する世界観というくくりでは捉えられない世界観をこの作品は持っている。これは映画にして云々という話ではなく原作がそういうビジョンを持って描かれている事を映像化したことによる制約が大きい。そこを正確に見極めなければ、この作品の正確な批評にはならないのだと思う。

もしスーパーヒーローが現実に存在していて、それが歴史上の史実に関与していたならばというのが、この作品のデフォルトとなる認識だ。
その設定を与えた時点で物語は勝手にドライブしそうな側面があるのだが、この作品はそれにさらに違うファクターをかぶせるところが非凡なところだと思う。
それは絶対者であるDrマンハッタンの存在がその一つにあると言える。

誰もが認め、逆らう事が出来ない定点となる存在としての彼はある種スーパーヒーローの中でも特異点として位置づいていて、他のヒーロとは一線を画する。
その定点があるからこそ、他のヒーローが持つ俗っぽい日常生活や人間性が際立つような気がする。
作品中の暴力描写や、性的描写がリアルなところを突いていて、うならされるところがあった反面、「おやっ」と思ったところは、やはり作品での人物の心情の描き方である。
全体的には善なる行為が善として描かれず、悪なる行為も悪として描かれないという事が記号的なものの見方に対して警鐘を鳴らしているようで好きなのだが、その反面いくつかのシーンでベタな心情の描き方をしているところがとても目についた。特に最後のオシマンディアスとロールシャッハそしてその後のロールシャッハとDrマンハッタンとのやりとりなどは紋切り型のヒーローものの定石のような気がしていて、観ている方としてはどういう視点で楽しめばいいのかが少し混乱したのが正直な感想だ。
これは原作によるところなのか、それとも映像化がそれを失敗しているのかは、僕が原作のコミックを読んでいないので何とも分からないが、これほどまでにある種マニアックな設定に立っている作品なのに、細かいところで違和感を覚えたのは事実だ。

とここまで述べておきながら以上の事とは全く違う観点で僕が興味を持ってしまったのは、覆面ということがもたらす意味だ。
なぜヒーローは覆面をするのか。
バットマンしかり、スパイダーマンしかり、日本の仮面ライダーしかり。
ヒーローはなぜ覆面をするのだろうか。
そのことをついつい考えてしまう。

劇中でもヒーローは「覆面の自警団」だと語られている。
公的に(この言い方に語弊があるならば、行政的に)位置づけられた警察や軍隊は覆面をせずに正義と呼ばれるような事を遂行する。
それはきっと個人の成果ではなく、組織的な力によって成果が求められているからである。そこに個人性というのは必要ない。
しかしヒーローというのは個人の力による正義の遂行であり、誰がその正義を全うするのかという事が非常に意味を持ってくる。
正義というのは相対的なもので、ある人に取っては正義である事も、立場を変えればそれは悪である事など過去の歴史をひもといてみればすぐに分かることである。
だからそれを遂行する人間は、少なくとも社会生活を営むという事を前提にすれば匿名性を帯びざるを得ない。社会というのは(特に民主主義社会)とても多様で様々な意見を持つ人々が居て、全うに生活を送ろうとすれば、その正義を遂行する人間が、日常生活を営む自分とは違う存在だと言い張らないと社会の仲間には入れないからだ。
だから覆面をしてある種ニセの記号に代理させることで正義を遂行しようとするのである。
正体がばれると二つの方向性でとんでもないことになる。
ポジティブな方向では、それこそマスコミが殺到し、取材が入りプライベートが暴かれ、秘密裏に正義を遂行することなど出来なくなってしまう。
ネガティブな方向では、正義を遂行された側からの報復や妬みそしりが横行し、それこそ振りかかる火の粉だらけの中で暮らさねばならないだろう。
劇中では前者がオシマンディアスで後者がロールシャッハなのだが。

だから覆面をして別のアイデンティティを獲得するのだ。
覆面されたヒーローという存在は誰でもない抽象的な記号なのである。
覆面そのもののデザインや見栄えに意味があるのではなく、覆面という行為に意味があるのだ。
だからみなヒーロは覆面をするのである。それが人智を超えた天誅や正義とでも言わんばかりに。

それでこのウォッチメンが面白いのは、やはりDrマンハッタンの存在である。
彼は正体を暴露して巨万の富と社会的地位を得たオシマンディアス以外で、唯一覆面をしていないキャラクターである。
皆がその存在を知っていて、メディアにもそのまま登場している。
それもそのはずである。
彼は覆面をする必要がないからである。
なぜなら、彼は人間を超えてしまって、社会生活も営む必要がないからだ。
正体を隠してまで社会に潜み適合する必要もない彼は、僕が考えるにヒーロではなく、得体の知れないもっと別の存在だ。
だから人間の考える正義など彼にはどうでも良く、さらに言うと人間という存在ですら永劫の宇宙の摂理の中でたまたま生じた現象に過ぎず、取るに足らないのだ。
つまり人間目線で正義を捉えていないのである。

ヒーローのヒーローたる所以は、あくまで人間目線から捉えた善悪の基準を遂行することだ。
皆が正しいと思っている事が行われなかった時に、それを代弁してくれるのがヒーローなのだが、その基準が人間目線でなくなったときにそれはヒーローではない何かなのかもしれない。
そういう意味では、ウォッチメンに出てくる他のヒーロー達は、十分人間臭く、ヒーローをしている。その生活観や苦悩、そしてコメディアンに見られるような欲望などは普通に人間目線から捉えられるもので、やはり日常感覚の延長上にしかヒーローはいないのだと思う。
日常と接点を断ってしまってはヒーローは位置づくことはない。
だからヒーローは、普通の人のフリをしながら覆面をして正義を遂行するのである。つまり覆面の中身がヒーローなのではなく、覆面そのものがヒーローなのだ。
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by innerscape | 2009-04-19 23:46 | 映画と演劇

空庭

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「空庭」  上田假奈代

血管をイメージしたという赤いテープは雨を吸って緑に沈む
みつめると ドクドクと脈打ちはじめる

銀の風船は鏡

病院の壁をうつし 食堂の団らんをうつし
入院している人をうつし はたらく人をうつし
回復する人をうつし 死にゆく人をうつす

すべての人は死にゆく人だ

六階の空庭に浮かぶ銀の風船には
銀色のことばがついている

病院ではたらく人が患者さんへあてたことば

百個あまりのことばが空庭に銀の雫を落とす

こころのなかのことば
言えなかったことば
伝えたかったことば
はたらく人のやさしいことば

六階の庭の空はネットの境目で
今日と明日をつないで
風に揺れる

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詩:上田假奈代
写真:山口洋典
インスタレーション:花村周寛
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by innerscape | 2009-04-09 22:51 | アート

風を見る

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病院というのは、何も治療をするだけの場所ではなく一つの生活空間だと思う。
特に長い入院生活を強いられるような場合、病院は街のように様々な要素があるべきだと思う。
もちろんその入院生活の中には自然や文化に触れるという体験があって当然だし、そうあるべきだと思う。

先日、大阪市立大学付属病院で詩人の上田かなよさんとのコラボレーションで行った「風のおみく詩」というインスタレーションではそういうテーマがあった。

入院生活に気がめいることの多い患者の方々が、空を感じられる場所として市大病院の6階には空庭がある。そこには緑が植えられ、風が吹き自然の要素とたくさん触れ合う事が出来る。
僕がその場所で試みたかったのは風や雨やといった自然現象を見えるようにすることだった。
それでそのためのメディアとして風船を浮かべる事にした。

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アルミの風船を200から300個ほど空に浮かべる。
その風船にはあらかじめ職員さんから患者さんへのメッセージとして集められた言葉が載せられている。
詩人の上田さんが詩としてピックアップした暖かい言葉は風船をたぐり寄せないと出会うことの出来ないおみくじとして空に浮かんでいる。
そして地上とは赤いリボンでつなぎとめられているのだ。
気に入ったおみくじがあれば持って帰る事が出来る。
このインスタレーションは減っていくことで完成するのだ。

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風が吹くたびに風船は倒れるが、風向きが変わると今度は反対側に倒れていく。
小さな中庭だが、そこでも場所によって微気象があり、建物際などは風が巻き込みにくいので風船が比較的上へ伸びていて、庭の中央部分では吹きさらしなので風船は風の方向に応じて低く揺れている。
夕方の一瞬、風が止まり凪がやってくると寝ていた風船が突如頭をもたげて一斉に立ちあがる様はとても美しい。
まるで生きているかのようだ。
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アルミの風船は鏡面になっていて、太陽光を受けてキラキラと光る。
たぶん遠くから見ると無数の発行物体が浮いているように見えるだろう。

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そして雨という自然現象も受け止める。
水滴をうけた風船と帯はその重さで地面へと沈み込み、また雨雲が晴れ、水滴を払いながら生きを吹き返すように上昇し始めるのだ。

僕たちは気づかないが、自然のドラマはそこで常に起こっている現象だ。
それに少しだけ力を貸して見えるようにするのがアートの力だと思う。
後は場所が勝手に物語を奏で始めるのだ。


インスタレーション:花村周寛
詩:上田かなよ
写真:kutowans studio
禁転載
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by innerscape | 2009-04-06 22:57 | アート

私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?

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