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私的風景の電脳記録
by innerscape
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韓国への旅 2日目

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午前中から麗水万博の事務局へのヒアリング。
橋爪さんが今年の上海万博大阪館のプロデューサーということもあり、ヒアリングを入れた。
2012年5月から8月まで韓国の麗水(ヨス)で行われる万博は「生きている海」というテーマの海洋博で、世界100カ国、800万人の参加者を想定している。

現代(ヒュンデ)の本社ビルの中に事務局を構えているので、てっきり現代がかんでいるのか思いきや、そうではないらしい。
100年前に整備された麗水は港町で、多島海で有名な場所だが、麗水自体で30万人、周辺地域あわせても100万人にも至らない小さな街だ。
この街で800万人を受け入れる準備を行うのは大変なインフラ整備が必要だろう。この博覧会でのインフラ整備をきっかけに今後麗水を観光課していく計画だ。
会場は25ヘクタールで周辺一帯をあわせると174ヘクタール。2100億円の予算で、経済波及効果は1.2億ほどの計算のようだ。
ヒアリングした段階では、麗水までの高速道路などのインフラ整備はほぼ出来上がっているが麗水内のインフラ整備がまだだという。

我々は大阪万博や愛知万博での経験を持っているので、その情報をこちらから提供する。
万博の場合、採算の話と跡地利用が重要だ。
特に跡地利用が非常に重要で、地域に何が残るのかということを見据えて万博は行われなければならない。
大阪万博の場合は莫大に儲かったことと、愛知万博と違い跡地利用を開催時点では決めきっていなかったので大きな公園へ転用する事が出来たのだという。
もし負債を抱えていたならば、跡地は売却されて都市開発が行われていただろう。
しかし愛知万博の場合は元々公園だったところを万博会場にし、また跡地を公園にするということを行ったので地元には何も残らない形になった。何でも公園にすればいいというのもまた都市経営の考え方からは違うのだと思う。万博の前後で街が変化したという感覚を地元が持てるかどうかが非常に重要だ。
イベント型の都市開発自体は日本でもう通用するとは思えないが、アジアではまだまだインフラ整備などに有効な手段なのだと思う。
しかし日本がどこを失敗したのかということをちゃんと伝える必要があると思う。

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その後、漢陽大学へ移動し観光学科にヒアリングへ。
非常にユニークなカリキュラムの大学で、そこの学科長の崔教授の頭の良さとレスポンスの早さが非常に印象的だった。10年前に設立されたこの学科は国際レベルの観光専門家を養成する特殊大学院で、ほとんどが夜間の社会人である。卒業生は政府や公共機関、企業などへもいくが、入学者の8割が現場で仕事を持つプロなので、実務での質の向上を目指すために来る人が多い。
漢陽大学は韓国でも上位5位には入る大学で、観光系では一番の大学である。専任は6名、兼任は8名で、企業のCEOなどが兼任している。教育内容は理論が3割、実務ノウハウが7割で、やはり研究というよりも、実務する上でのテクニックと理論的背景の結びつきを学びにくるのか。年齢層は30代が多いようだ。
既に立教大学との交流はあるようで、府立大学とも今後どのような形で連携するかは分からないが、連携の可能性を模索するということで話をまとめてきた。

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漢陽大学を後にし、チョンゲチョン(清渓川)へ。
これはイ・ミョンバク大統領の政策で2005年に復活した都市河川だ。
高速道路が通っていたのだが、それを撤去し、スラムクリアランスを行い人々に開かれた都市河川へ。
チョンゲチョン博物館に全てそのプロセスが展示されている。
開発そのものにはいくつか疑問もあるが、このトップダウンによる政策決定の早さと強さが持っている力は認めざるを得ないと感じる。
川の中央にかつての高速道路の橋脚が3本だけ取り残されているのがとてもいい。
解体作業の途中で地元住民から残してほしいという声があがったようだ。
失われて行くものへの感性が開かれ、彫刻が生まれる瞬間だと感じた。
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夜は韓国を代表するエンターテイメントのNANTAを観劇に。
ナンタはブロードウェイにも出た事があるエンターテインメントで、あるレストランの調理場を舞台にリズムや演劇など様々な物語が繰り広げられて行くミュージカルだ。
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さすがに12年間毎晩やっているだけあり、完成度は非常に高くとても楽しめる。
規模的には大阪の小演劇の劇場と同じぐらいの200席ぐらいだが、専用劇場があり、毎晩同じ演目が行われている。NANTAだけでソウル市内には専用劇場が3カ所あり、それ以外のこうしたエンターテインメントの劇場も多数あって、ひとつの大きなジャンルになっている。

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実はここまで盛んなのには理由がある。
一つは言語を全く使わないことだ。
だから外国人も楽しむ事が出来る。
演劇というのは言葉の壁が非常に大きい。
映画のようにサブタイトル出す事があたりまえになっていないため、言葉の壁がストーリーを追いかけるのに邪魔になる。
そこをうまくしていて、現に客席の8割以上は外国人だった。しかも毎晩満員らしい。

もう一つはずっと同じ演目を続けている事と、キャラクターの役割がはっきりと色分けされていて、それごとに数人づつ役者が居るという事だ。これはキャストが代わってもさほど影響がないということなので、ロングラン出来る理由もここにある。
あとはブロードウェイと同じように笑いとリズムや派手なエンターテインメントがあるということか。

翻って大阪、いや日本での小演劇の現状を見てみると非常に危機感を覚える。
客席に座っているのは演劇関係者のみ。外国人に至っては一人として見た事が無い。
完全に内向きに閉じている。役者側も同様で3ヶ月稽古して来た成果はたったの3日間で終わってしまうほど効率が悪いことになっている。
芸術は効率を求めるものでもないとは思うが、閉じるあまりに世界から相手にされない現状認識が出来ているのだろうか。これは美術館でも同じ事だと思う。

自分も舞台芸術に端っこでも関わる人間としてかなりの危機感を覚えた夜だった。
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by innerscape | 2010-03-16 23:59 |

私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?

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