flw moon innerscape
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京阪中之島線の新駅“なにわ橋駅”(2008年10月19日開業)で本年度もラボカフェを実施します。
「ラボカフェ」は、過去2年に継続的に実施されて来た「中之島コミュニケーションカフェ」の一つで、カフェという環境装置をラボラトリー(実験室)的に用いて、大阪大学が社会の様々な組織とコラボレーションしながら、主題に応じた研究・開発を繰り広げるプロデュース事業です。
本年度からは“なにわ橋駅”の中に新たに設けられたスペース「アートエリア ビーワン」へ会場を移して今秋10月から来年3月まで継続的に、哲学、アート、サイエンス、減災、医療etc.……多岐に渡るテーマに基づいて、対話、レクチャー、アートイベントなどのさまざまなプログラムを実施します。
合わせまして、過去2年間の中之島コミュ二ケーションカフェでの活動内容を紹介する情報展示を10月から12月に併設します。
※「中之島コミュニケーションカフェ」は大学の知、アートの力、地域の元気を活かしながら、中之島エリアにおける文化芸術の創造と交流の場の創出を目指すプロジェクトです。「中之島コミュニケーションカフェ2008 駅を超える 新たな駅のはじまり」は、「2008 中之島物語」の一環として開催します。
入場無料
主催 「中之島コミュニケーションカフェ2008」プロジェクトチーム(京阪電気鉄道(株)+大阪大学+NPO法人ダンスボックス)
共催 大阪大学21世紀懐徳堂
企画制作 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)/NPO法人ダンスボックス
制作協力 NPO recip[地域文化に関する情報とプロジェクト]
会場:アートエリアB1 京阪電車中之島線「なにわ橋駅」地下1階コンコ−ス
(地下鉄「淀屋橋駅」「北浜駅」から徒歩約5分)
ラボカフェお問い合わせ 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)
☎06-6816-9494 (平日 9:00〜17:00) *cscd@ns.jim.osaka-u.ac.jp
プログラム詳細
※受付は各回開始30分前より|内容は予告なく変更になる可能性があります。あらかじめご了承ください
中之島コミュニケーションカフェ
「オープンミーティング 01」
日時10月20日[月] 19:00−21:00
定員30名(当日先着順)
企業、大学、アートNPOの社学連携(共同プロジェクト)による「中之島コミュニケーションカフェ」。2006年から始動したさまざまな試みを検証しつつ、これからの課題や可能性について語り合います。
•カフェマスター 「中之島コミュニケーションカフェ」プロジェクトメンバー、大阪大学CSCD教員 他
カフェイマージュ
「鑑賞編:映像の風景」
日時10月21日[火] 19:00−21:00
定員20名(入退場自由)
「カフェイマージュ」では、映像作品を鑑賞しながら話し合ったり、ビデオカメラを使って簡単な映像制作を行ったりします。まずは、いろんな作品を見ながら映像表現に親しんでみましょう。
(機材準備等不要)
•カフェマスター 久保田テツ+ほんまなおき(大阪大学CSCD教員)
デザインカフェ
「001. 駅」
日時10月22日[水] 19:00−21:00
定員30名(当日先着順)
「デザインカフェ」は私たちの身の回りにあるモノ・コトを、デザインという視点から一緒に考える場です。さまざまなデザインの例をあげ、時にゲストを招きながら、参加された方々と語り合います。
•カフェマスター CSCDデザインプロジェクトメンバー(大阪大学CSCD教員)
サイエンスカフェ
「気候変動とまちづくり―
“地球温暖化”は本当に脅威なのか?」
日時10月23日[木] 18:30−20:30
定員30名程度(当日先着順)
地球温暖化が大きな問題として注目されていますが、それは本当はどんな問題なのでしょうか? また、都市や家庭で、どんな対策がとれるのでしょうか? 地球の未来について、まずは気軽にお話して見ませんか?
•ゲスト 下田吉之(大阪大学教授)
•カフェマスター 平川秀幸(大阪大学CSCD准教授)
中之島哲学コレージュ
哲学カフェ 「“これでいいのだ”とは?」
日時10月24日[金] 19:00−21:00
定員40名(入退場自由)
コーヒーを飲みながら、日常生活から科学、芸術まで、幅広いテーマについて参加者みんなで問いを立て、議論を楽しみます。よそから仕入れた知識に頼ることなく、自分たちのことばでゆっくり考えましょう。
•進行役 桑原英之(Café Philo)
•カフェマスター 本間直樹(大阪大学CSCD准教授/Café Philo代表)+Café Philo
国際デザイン学会WS
「ファッションと建築」
国際ワークショップとマリンバ演奏会
日時10月26日[日] 18:30−21:00
定員40名(当日先着順)
※国際デザイン学会参加者120名
通崎睦美さんの着物コレクションをバックに、日本、フランス、ベルギー、スペインの専門家が「ファッションと建築」の興味深い関係について語りあいます。最後に、通崎睦美さんのマリンバ演奏を聴く日曜の宵。
18:30-20:00 国際ワークショップ
20:00-21:00 通崎睦美トークと演奏
(共演:今田香織)
•ゲスト ドロレス・ドピコ(スペイン・ビゴ大学教授)他
•カフェマスター 藤田治彦(大阪大学CSCD教授)
※関連展示 「着こなすアート ~通崎睦美きものコレクション~」(13:00-21:00)
中之島コミュニケーションカフェ
「オープンミーティング 02」
日時10月27日[月] 19:00−21:00
定員30名(当日先着順)
企業、大学、アートNPOの社学連携(共同プロジェクト)による「中之島コミュニケーションカフェ」。2006年から始動したさまざまな試みを検証しつつ、これからの課題や可能性について語り合います。
•カフェマスター 「中之島コミュニケーションカフェ」プロジェクトメンバー、大阪大学CSCD教員 他
カフェイマージュ
「制作編:夜の中之島」
日時10月28日[火] 19:00−21:00
定員10名(当日先着順)
カフェイマージュ制作編では、映像を作る体験をしていただきます。今回は、携帯電話のカメラ機能やデジタルカメラを使って、夜の中之島を題材にショートムービーを作ってみましょう。(機材準備等不要)
•カフェマスター 久保田テツ+ほんまなおき(大阪大学CSCD教員)
第1回公衆衛生カフェ
「大阪の公衆衛生~医療制度改革後の地域保健活動を展望する」
日時10月29日[水]
第1部 10:30−12:45
第2部 14:15−17:30
定員各回50名(当日先着順)
※大阪公衆衛生協会会員150人
医療制度改革後の地域保健活動を展望するため、第1部は府内の市町村担当者による問題提起と討論、第2部は専門家による講演と討論を行う。
•ゲスト 一圓光彌(関西大学教授)、岡村智教(国立循環器病センター)、柳尚夫(大阪府四条畷保健所長)
•カフェマスター 林田雅至(大阪大学CSCD教授)、高鳥毛敏雄(大阪大学特任教授・健康政策学)、磯博康(大阪大学教授・公衆衛生学)
アーティストワークショップ01
「川俣正の仕事
ワーク・イン・プログレス」
日時10月30日[木] 18:30−20:30
定員50名(当日先着順)
駅の新たな価値を秘めたこの場で何が可能なのか? アートとしてのカフェとは? それらを創造・実践するアーティストを迎え、公開研究会を開催します。第一弾は世界各国でアートプロジェクトを展開する川俣正氏が登場!
•ゲスト 川俣正(美術家/パリ国立高等芸術学院教授)
•カフェマスター 木ノ下智恵子(大阪大学CSCD特任講師)
中之島哲学コレージュ
「哲学セミナー 第1回 臨床哲学」
日時10月31日[金] 19:00−21:00
定員40名(当日先着順/入退場自由)
研究者、社会人、大学院生など、さまざまな人を講師に迎え、レクチャーとディスカッションからなるセミナーを開きます。現代社会の問題を考えるために必要な哲学を自分たちの手で作りましょう! 第1回は、大阪大学臨床哲学の教員・院生が担当します。
•ゲスト 大阪大学文学研究科臨床哲学の教員・院生
•カフェマスター 本間直樹(大阪大学CSCD准教授/Café Philo代表)+Café Philo
「ラボカフェ」は、過去2年に継続的に実施されて来た「中之島コミュニケーションカフェ」の一つで、カフェという環境装置をラボラトリー(実験室)的に用いて、大阪大学が社会の様々な組織とコラボレーションしながら、主題に応じた研究・開発を繰り広げるプロデュース事業です。
本年度からは“なにわ橋駅”の中に新たに設けられたスペース「アートエリア ビーワン」へ会場を移して今秋10月から来年3月まで継続的に、哲学、アート、サイエンス、減災、医療etc.……多岐に渡るテーマに基づいて、対話、レクチャー、アートイベントなどのさまざまなプログラムを実施します。
合わせまして、過去2年間の中之島コミュ二ケーションカフェでの活動内容を紹介する情報展示を10月から12月に併設します。
※「中之島コミュニケーションカフェ」は大学の知、アートの力、地域の元気を活かしながら、中之島エリアにおける文化芸術の創造と交流の場の創出を目指すプロジェクトです。「中之島コミュニケーションカフェ2008 駅を超える 新たな駅のはじまり」は、「2008 中之島物語」の一環として開催します。
入場無料
主催 「中之島コミュニケーションカフェ2008」プロジェクトチーム(京阪電気鉄道(株)+大阪大学+NPO法人ダンスボックス)
共催 大阪大学21世紀懐徳堂
企画制作 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)/NPO法人ダンスボックス
制作協力 NPO recip[地域文化に関する情報とプロジェクト]
会場:アートエリアB1 京阪電車中之島線「なにわ橋駅」地下1階コンコ−ス
(地下鉄「淀屋橋駅」「北浜駅」から徒歩約5分)
ラボカフェお問い合わせ 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)
☎06-6816-9494 (平日 9:00〜17:00) *cscd@ns.jim.osaka-u.ac.jp
プログラム詳細
※受付は各回開始30分前より|内容は予告なく変更になる可能性があります。あらかじめご了承ください
中之島コミュニケーションカフェ
「オープンミーティング 01」
日時10月20日[月] 19:00−21:00
定員30名(当日先着順)
企業、大学、アートNPOの社学連携(共同プロジェクト)による「中之島コミュニケーションカフェ」。2006年から始動したさまざまな試みを検証しつつ、これからの課題や可能性について語り合います。
•カフェマスター 「中之島コミュニケーションカフェ」プロジェクトメンバー、大阪大学CSCD教員 他
カフェイマージュ
「鑑賞編:映像の風景」
日時10月21日[火] 19:00−21:00
定員20名(入退場自由)
「カフェイマージュ」では、映像作品を鑑賞しながら話し合ったり、ビデオカメラを使って簡単な映像制作を行ったりします。まずは、いろんな作品を見ながら映像表現に親しんでみましょう。
(機材準備等不要)
•カフェマスター 久保田テツ+ほんまなおき(大阪大学CSCD教員)
デザインカフェ
「001. 駅」
日時10月22日[水] 19:00−21:00
定員30名(当日先着順)
「デザインカフェ」は私たちの身の回りにあるモノ・コトを、デザインという視点から一緒に考える場です。さまざまなデザインの例をあげ、時にゲストを招きながら、参加された方々と語り合います。
•カフェマスター CSCDデザインプロジェクトメンバー(大阪大学CSCD教員)
サイエンスカフェ
「気候変動とまちづくり―
“地球温暖化”は本当に脅威なのか?」
日時10月23日[木] 18:30−20:30
定員30名程度(当日先着順)
地球温暖化が大きな問題として注目されていますが、それは本当はどんな問題なのでしょうか? また、都市や家庭で、どんな対策がとれるのでしょうか? 地球の未来について、まずは気軽にお話して見ませんか?
•ゲスト 下田吉之(大阪大学教授)
•カフェマスター 平川秀幸(大阪大学CSCD准教授)
中之島哲学コレージュ
哲学カフェ 「“これでいいのだ”とは?」
日時10月24日[金] 19:00−21:00
定員40名(入退場自由)
コーヒーを飲みながら、日常生活から科学、芸術まで、幅広いテーマについて参加者みんなで問いを立て、議論を楽しみます。よそから仕入れた知識に頼ることなく、自分たちのことばでゆっくり考えましょう。
•進行役 桑原英之(Café Philo)
•カフェマスター 本間直樹(大阪大学CSCD准教授/Café Philo代表)+Café Philo
国際デザイン学会WS
「ファッションと建築」
国際ワークショップとマリンバ演奏会
日時10月26日[日] 18:30−21:00
定員40名(当日先着順)
※国際デザイン学会参加者120名
通崎睦美さんの着物コレクションをバックに、日本、フランス、ベルギー、スペインの専門家が「ファッションと建築」の興味深い関係について語りあいます。最後に、通崎睦美さんのマリンバ演奏を聴く日曜の宵。
18:30-20:00 国際ワークショップ
20:00-21:00 通崎睦美トークと演奏
(共演:今田香織)
•ゲスト ドロレス・ドピコ(スペイン・ビゴ大学教授)他
•カフェマスター 藤田治彦(大阪大学CSCD教授)
※関連展示 「着こなすアート ~通崎睦美きものコレクション~」(13:00-21:00)
中之島コミュニケーションカフェ
「オープンミーティング 02」
日時10月27日[月] 19:00−21:00
定員30名(当日先着順)
企業、大学、アートNPOの社学連携(共同プロジェクト)による「中之島コミュニケーションカフェ」。2006年から始動したさまざまな試みを検証しつつ、これからの課題や可能性について語り合います。
•カフェマスター 「中之島コミュニケーションカフェ」プロジェクトメンバー、大阪大学CSCD教員 他
カフェイマージュ
「制作編:夜の中之島」
日時10月28日[火] 19:00−21:00
定員10名(当日先着順)
カフェイマージュ制作編では、映像を作る体験をしていただきます。今回は、携帯電話のカメラ機能やデジタルカメラを使って、夜の中之島を題材にショートムービーを作ってみましょう。(機材準備等不要)
•カフェマスター 久保田テツ+ほんまなおき(大阪大学CSCD教員)
第1回公衆衛生カフェ
「大阪の公衆衛生~医療制度改革後の地域保健活動を展望する」
日時10月29日[水]
第1部 10:30−12:45
第2部 14:15−17:30
定員各回50名(当日先着順)
※大阪公衆衛生協会会員150人
医療制度改革後の地域保健活動を展望するため、第1部は府内の市町村担当者による問題提起と討論、第2部は専門家による講演と討論を行う。
•ゲスト 一圓光彌(関西大学教授)、岡村智教(国立循環器病センター)、柳尚夫(大阪府四条畷保健所長)
•カフェマスター 林田雅至(大阪大学CSCD教授)、高鳥毛敏雄(大阪大学特任教授・健康政策学)、磯博康(大阪大学教授・公衆衛生学)
アーティストワークショップ01
「川俣正の仕事
ワーク・イン・プログレス」
日時10月30日[木] 18:30−20:30
定員50名(当日先着順)
駅の新たな価値を秘めたこの場で何が可能なのか? アートとしてのカフェとは? それらを創造・実践するアーティストを迎え、公開研究会を開催します。第一弾は世界各国でアートプロジェクトを展開する川俣正氏が登場!
•ゲスト 川俣正(美術家/パリ国立高等芸術学院教授)
•カフェマスター 木ノ下智恵子(大阪大学CSCD特任講師)
中之島哲学コレージュ
「哲学セミナー 第1回 臨床哲学」
日時10月31日[金] 19:00−21:00
定員40名(当日先着順/入退場自由)
研究者、社会人、大学院生など、さまざまな人を講師に迎え、レクチャーとディスカッションからなるセミナーを開きます。現代社会の問題を考えるために必要な哲学を自分たちの手で作りましょう! 第1回は、大阪大学臨床哲学の教員・院生が担当します。
•ゲスト 大阪大学文学研究科臨床哲学の教員・院生
•カフェマスター 本間直樹(大阪大学CSCD准教授/Café Philo代表)+Café Philo
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by innerscape
| 2008-10-19 23:36
| コミュニケーションデザイン
最初は何かの冗談かと思った。
ことあるごとにふざけていた僕ら同期のいつものパターン。
シャレにならないサプライズを仕掛けておいてそれをネタに笑う。
亡くなったのはそんな馬鹿な事をしていた仲間の一人だった。
「仲間」という言い方が良いのか...。
感覚的には「戦友」という言葉が近い。
時間の長さの問題ではない。
どういう経験をくぐり抜けて来たのかということの方が重要なのだ。
何人かいる僕たち同期は全員そんな経験を共有している貴重な戦友だった。
冗談であって欲しかった。
でもいつものように冗談では済まされない予感がしていた。
そしてそれが冗談かどうか確かめるのが僕はイヤだった。
日本のしきたりに従い、喪服を着て香典に薄墨で名前を書き、車に乗り込んでエンジンをかけ出発するまでにどれほど時間をかけたか。
僕がようやくついた頃には既にお経も終わり、仲間達は2階で食事をしていると告げられた。
味気ない葬祭会館のやたらと高い天井の下に置かれた棺の前にぽつりと一人立つ。
焼香を二度あげ顔を上げると、出会ったころとほとんど代わり映えのしないあいつの写真が飾ってあった。
その写真の下の棺には顔の部分のフタがあけられていて、そこには透明の板が貼られているのが見える。
焼香台と棺との距離がとても長く感じられた。
棺に近づくにつれ空気の密度は濃さを増していき、まるで粘着質の液体の中を進まなければならないようだった。
一歩足をふみだすごとに上がる心拍数。
空気は濃くなるくせにちっとも酸素が肺に送り込まれない。
それでも僕は進まなければならなかった。
たどりつき、開かれたフタを斜め上から覗き込むとあいつがいた。
やはり冗談のようだった。
眠っている。
少し顔色は悪いが眠っているだけだ。
どこかに息吹を感じようと目をあちこちに凝らす。
ぴくりとでも動けばすぐにでも棺を引きはがして死ぬまで殴ってやろうと思っていた。
見つめながらどれぐらいの時間がたったのか覚えていない。
最初に気づいたのは強く握りしめていたせいでなくなった手の感覚だ。
なくなった感覚に気づくのは変だが、確かにそうだった。
次に地面が揺れているような感覚を受けたのは、僕の足が意思とは関係なく小刻みに震えているせいだった。
いつものように前歯を二本出して目を閉じているあいつの顔には血の色が無かった。
それでもまだ冗談のようだ。
不思議と涙は出なかった。
鼻をすすりながらのどを詰まらせる音も聞こえ、いつの間にかあいつのお姉さんが後ろに立っていた。
僕はあいつに渡そうとハーモニカを持って来ていたことを思い出し、それをお姉さんに差し出した。明日の告別式には参加出来ないので、出棺前にこれを棺に入れて欲しいと。
お姉さんは分かりましたと言い受け取ってくれた。
あいつは僕のハーモニカの音が好きだった。
自分のピアノの音にハーモニカの音をのせて二人だけでやりたい歌があると、
照れながら言っていたことを覚えている。
いつも帽子を後ろ向きにかぶり、キーボードに向かう姿は演奏というよりも作業や操作に近い動作だといつも思っていた。
思えば初めて一緒に演奏した同期があいつだった。
二階で仲間が食事をしているから加わって欲しいとあいつの母親が僕に告げる。
仲間とは出来ればこんな形で会いたくはなかったが、断る理由はそれ以外見つからないので上に行く事にした。
二階は宴会場のように騒がしかった。
きっと僕の仲間達は一通り悲しみを通過して今は落ち着いているのだろうか。
そこには遅れて来た故の時間の温度差があるのかもしれないが、正直僕は騒ぐ気にはなれなかった。
悲しみの表現は人それぞれだ。
飲んであいつの事を語って想い出にすること。
涙で顔を腫らすこと。
誰かに向かってなぜなのかと理由を問いつめること。
でも今の僕には静かに受け止める時間が必要だった。
過剰なロマンチズムでも、過酷なリアリズムでもなく、ただ静かに息を吸い込み吐き出すだけの表現が僕には欲しかった。
外階段の踊り場に出て、下におりた仲間達を遠くから眺める。
なぜか小学五年のころに父親と交わした会話を思い出していた。
人は死ねばどうなるんだろう___。
そう尋ねた時、父親がどう答えたのか覚えていないが、「俺もお前ぐらいの時に同じ事を考えたことがある。」と言っていたことは覚えている。
あいつと同じ心筋梗塞で亡くなった父親。
同じ原因で死ぬと同じ場所に行けるのだろうか...。
僕は仲間達を遠くに感じながらそんなことをぼんやりと考えていた。
ことあるごとにふざけていた僕ら同期のいつものパターン。
シャレにならないサプライズを仕掛けておいてそれをネタに笑う。
亡くなったのはそんな馬鹿な事をしていた仲間の一人だった。
「仲間」という言い方が良いのか...。
感覚的には「戦友」という言葉が近い。
時間の長さの問題ではない。
どういう経験をくぐり抜けて来たのかということの方が重要なのだ。
何人かいる僕たち同期は全員そんな経験を共有している貴重な戦友だった。
冗談であって欲しかった。
でもいつものように冗談では済まされない予感がしていた。
そしてそれが冗談かどうか確かめるのが僕はイヤだった。
日本のしきたりに従い、喪服を着て香典に薄墨で名前を書き、車に乗り込んでエンジンをかけ出発するまでにどれほど時間をかけたか。
僕がようやくついた頃には既にお経も終わり、仲間達は2階で食事をしていると告げられた。
味気ない葬祭会館のやたらと高い天井の下に置かれた棺の前にぽつりと一人立つ。
焼香を二度あげ顔を上げると、出会ったころとほとんど代わり映えのしないあいつの写真が飾ってあった。
その写真の下の棺には顔の部分のフタがあけられていて、そこには透明の板が貼られているのが見える。
焼香台と棺との距離がとても長く感じられた。
棺に近づくにつれ空気の密度は濃さを増していき、まるで粘着質の液体の中を進まなければならないようだった。
一歩足をふみだすごとに上がる心拍数。
空気は濃くなるくせにちっとも酸素が肺に送り込まれない。
それでも僕は進まなければならなかった。
たどりつき、開かれたフタを斜め上から覗き込むとあいつがいた。
やはり冗談のようだった。
眠っている。
少し顔色は悪いが眠っているだけだ。
どこかに息吹を感じようと目をあちこちに凝らす。
ぴくりとでも動けばすぐにでも棺を引きはがして死ぬまで殴ってやろうと思っていた。
見つめながらどれぐらいの時間がたったのか覚えていない。
最初に気づいたのは強く握りしめていたせいでなくなった手の感覚だ。
なくなった感覚に気づくのは変だが、確かにそうだった。
次に地面が揺れているような感覚を受けたのは、僕の足が意思とは関係なく小刻みに震えているせいだった。
いつものように前歯を二本出して目を閉じているあいつの顔には血の色が無かった。
それでもまだ冗談のようだ。
不思議と涙は出なかった。
鼻をすすりながらのどを詰まらせる音も聞こえ、いつの間にかあいつのお姉さんが後ろに立っていた。
僕はあいつに渡そうとハーモニカを持って来ていたことを思い出し、それをお姉さんに差し出した。明日の告別式には参加出来ないので、出棺前にこれを棺に入れて欲しいと。
お姉さんは分かりましたと言い受け取ってくれた。
あいつは僕のハーモニカの音が好きだった。
自分のピアノの音にハーモニカの音をのせて二人だけでやりたい歌があると、
照れながら言っていたことを覚えている。
いつも帽子を後ろ向きにかぶり、キーボードに向かう姿は演奏というよりも作業や操作に近い動作だといつも思っていた。
思えば初めて一緒に演奏した同期があいつだった。
二階で仲間が食事をしているから加わって欲しいとあいつの母親が僕に告げる。
仲間とは出来ればこんな形で会いたくはなかったが、断る理由はそれ以外見つからないので上に行く事にした。
二階は宴会場のように騒がしかった。
きっと僕の仲間達は一通り悲しみを通過して今は落ち着いているのだろうか。
そこには遅れて来た故の時間の温度差があるのかもしれないが、正直僕は騒ぐ気にはなれなかった。
悲しみの表現は人それぞれだ。
飲んであいつの事を語って想い出にすること。
涙で顔を腫らすこと。
誰かに向かってなぜなのかと理由を問いつめること。
でも今の僕には静かに受け止める時間が必要だった。
過剰なロマンチズムでも、過酷なリアリズムでもなく、ただ静かに息を吸い込み吐き出すだけの表現が僕には欲しかった。
外階段の踊り場に出て、下におりた仲間達を遠くから眺める。
なぜか小学五年のころに父親と交わした会話を思い出していた。
人は死ねばどうなるんだろう___。
そう尋ねた時、父親がどう答えたのか覚えていないが、「俺もお前ぐらいの時に同じ事を考えたことがある。」と言っていたことは覚えている。
あいつと同じ心筋梗塞で亡くなった父親。
同じ原因で死ぬと同じ場所に行けるのだろうか...。
僕は仲間達を遠くに感じながらそんなことをぼんやりと考えていた。
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by innerscape
| 2008-10-11 00:19
| 私的詩
だけどその訃報は突然やって来た。
もちろん僕には何が起こるか全く知る術はなかったのだけど、昼下がりになったころから出発地の無い胸騒ぎだけが暴れていた。
知らせを受け取った時は何のことか分からなかった。
誰について語られているのかを思い出すのに少し時間を使い、改めて顔を思い浮かべた時には疲れのせいでおかしな想像をしているのだと。
むしろおかしな想像であってくれれば。
未だ現実感はない。
でも明日僕は黒い服を着てそこへ出向くのか。
このページを開いて、日記なのか何なのか分からない書き込む時間はいつもの僕にとってそれほど意味を持たない余興なのだがしかし。
今はこうしてキーボードを打ち込むことで救われている。
もちろん僕には何が起こるか全く知る術はなかったのだけど、昼下がりになったころから出発地の無い胸騒ぎだけが暴れていた。
知らせを受け取った時は何のことか分からなかった。
誰について語られているのかを思い出すのに少し時間を使い、改めて顔を思い浮かべた時には疲れのせいでおかしな想像をしているのだと。
むしろおかしな想像であってくれれば。
未だ現実感はない。
でも明日僕は黒い服を着てそこへ出向くのか。
このページを開いて、日記なのか何なのか分からない書き込む時間はいつもの僕にとってそれほど意味を持たない余興なのだがしかし。
今はこうしてキーボードを打ち込むことで救われている。
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by innerscape
| 2008-10-10 01:12
| 日常
フラット(♭)は2008年10月よりハナムラチカヒロがアトリエとしてプライベートに居場所を獲得しながら、それをパブリックとどのようにして共有出来るかを模索しています。
ジャンルを超えたクリエイターが集まる実験スペースとして、アートやデザイン、映画や演劇、哲学や研究をはじめ、様々な活動を行う人々がこの場所に集い、様々な表現として発信するサロンを目指しています。各種イベントの開催や、レンタルスタジオ・芝居の稽古が出来るスペースもありますので、ご興味を持たれた方は是非一度ご連絡ください。
flwmoon@mac.com

flat
【名】
平面、平らな部分
平地、平原、湿地、浅瀬
《音楽》変音[フラット]記号
舞台の書割り
〈英古〉まぬけ
フラット、アパート、共同住宅
架空の事物
【自動】
平らになる
《音楽》半音下がる
【他動】
平らにする
《音楽》〔音階を〕半音下げる
【形】
平たい、平らな、平坦な、
均一の、変化が少ない、薄い
【副】
〔数量・時間などが〕きっかり、ちょうど、ジャスト
ジャンルを超えたクリエイターが集まる実験スペースとして、アートやデザイン、映画や演劇、哲学や研究をはじめ、様々な活動を行う人々がこの場所に集い、様々な表現として発信するサロンを目指しています。各種イベントの開催や、レンタルスタジオ・芝居の稽古が出来るスペースもありますので、ご興味を持たれた方は是非一度ご連絡ください。
flwmoon@mac.com

flat
【名】
平面、平らな部分
平地、平原、湿地、浅瀬
《音楽》変音[フラット]記号
舞台の書割り
〈英古〉まぬけ
フラット、アパート、共同住宅
架空の事物
【自動】
平らになる
《音楽》半音下がる
【他動】
平らにする
《音楽》〔音階を〕半音下げる
【形】
平たい、平らな、平坦な、
均一の、変化が少ない、薄い
【副】
〔数量・時間などが〕きっかり、ちょうど、ジャスト
▲
by innerscape
| 2008-10-01 00:00
| 極東EX
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私“flw moon”が日々の生活の中で感じた事を見つめ直し記録します。
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?
心のフィルターを通して見た日々のシーンをひとつづつ電脳に記憶させることで、果たしてどんな風景が見えてくるだろうか・・・?
カテゴリ
全体インフォメーション
日常
アート
コミュニケーションデザイン
ランドスケープデザイン
プロダクトデザイン
映画と演劇
観光ターム
情報デザインと風景
崩壊のロジック
景観
装置と風景
音楽
自然について
出来事の風景
キネスケープ
私的詩
マゾヒスティックランドスケープ
覚書
未来の自分との対話
旅
居場所の獲得
極東EX
身体技法
現象デザイン
聖地創造論
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